仕事をしているときや受験勉強・資格勉強中に、「もう少し記憶力が良ければ」と思ったことはありませんか?記憶力をあげることができれば、勉強も捗るはずですし、仕事でのケアレスミスも減らすことができますよね。
今回は『記憶力』という概念や、記憶力を上げる様々な方法を紹介していきますので、是非ご参考にしてくださいね。
記憶力とは?
記憶力とは、文字通り『物事を記憶しておく能力』のことです。ここで1つ注意していただいたいのですが、『暗記力』と『記憶力』は似て非なるものです。
『記憶力』とは覚えたことを長い記憶し、忘れないようにする能力の事であり、『暗記力』とは新しい情報を覚えるための能力になります。
学習に関する3種類の記憶力
一言で『記憶力』と言っても、学習に関する記憶力には以下の紹介する3つの種類があります。
感覚記憶
視覚や聴覚などで得た情報をそのままの状態で脳に記憶するものになります。数秒程度のごくわずかな時間しか記憶されませんが、その中で脳が必要だと判断したものが次のフェーズ(短期記憶)に移ります。普段の生活の中で私たちはこの『感覚記憶』を繰り返し行っているのです。
短期記憶
一時的に数個の情報を記憶するものになります。前述した『感覚記憶』よりも長い時間脳に記憶されますが、それでも数十秒程度であり、仕事や勉強ではこのフェーズでは足りません。
長期記憶
一度記憶すると、簡単には忘れられない状態です。大まかに言えば、漢字や年号・数式や仕事の仕方、またはスポーツの時の体の動かし方がこちらに分類されます。
勉強や仕事で必要になるのは、このフェーズの記憶になります。
記憶力は高めることができる?鍛えられるの?
結論から申し上げると、記憶力はトレーニングや普段の生活習慣によって高めることができます。「記憶力は生まれた時に決まっている」などの話を聞いたことがあるかもしれませんがそんなことはありません。
確かに記憶力には個人差がありますが、誰でも平等に記憶力を高めるチャンスは与えられています。
この根拠となるポイントを2つ紹介していきますね。
BDNF(脳由来神経栄養因子)
BDNPとは、脳由来の神経栄養因子であり、神経細胞の発生・成長・維持・再生を促進させる働きがあります。
記憶を司る『海馬』にBDNFが多く存在することから、この物質を増やすことが記憶力の向上に繋がると考えられ、実際に国内外の研究で分かってきています。
BDNFは65歳以上になると年々低下していくため、加齢による記憶力の低下や認知症の発症率の増加はこの物質によるものであると考えられ、脳機能と深い関わりがあるとされています。
したがって、BDNFを増加させることが記憶力の向上に繋がるのです。
シナプスの可塑性(かそせい)
脳内やニューロンという神経細胞がシナプスによってインターネットのように繋がっています。
新しい経験や学習を行うことでシナプスの通りが良くなり、伝達できる物質の量が増えるため、記憶力を高めることができます。
なぜ記憶力は低下するのか?
「人間の脳が全てを記憶しておくことができれば生物的にも優れているはずなのに、なぜ忘れるようにできているのか」と疑問に思ったことはありませんか?
実は人間の脳容量には限界があり、日ごろ触れている大量の情報を全て記憶してしまった場合、すぐに脳の記憶容量がパンクしてしまうと言われています。その為、記憶を司る脳の『海馬』という部分が不要だと判断した情報を「忘れる」選択をしているのです。
しかし、それでも他の人よりも記憶力が悪いと感じている方は、以下に紹介する原因があるかもしれません。
睡眠不足
睡眠不足だと、記憶力が悪くなると感じますよね。それもそのはず、人間は脳に情報を定着させる作業を、睡眠時間を使用して行っているからです。
なお、記憶を定着させるために必要な睡眠時間は、様々な研究の結果6~7時間30分ほどは必要であるとされています。
栄養が足りていない
記憶力の低下は、ビタミンB群の不足で起きていることがわかっています。特にビタミンB1は脳の働きや神経の働きを正常に保つ役割を持っているため、このビタミンB1が不足することで神経障害が起き、記憶力の低下や集中力の低下を引き起きすのです。
ストレス
記憶を司る『海馬』は、とても繊細で、ストレスがかかることでダメージを受けやすいと考えられています。例えば、PTSDやうつ病に関する研究によると、患者が長い期間ストレスを感じ続けたことで、海馬が委縮してしまっていたことが確認されています。
日ごろからストレスを感じないように生活することが重要であり、ストレス発散の方法を身に付けておくことが大切です。
記憶力を高める習慣
それでは、ここからは記憶力を高める日頃の習慣を紹介してきます。
1日の始まりに、軽い有酸素運動を行う
ジョギングやウォーキング・水泳などの有酸素運動を行うことで、前述したBDNF(脳由来神経栄養因子)の分泌が促進され、認知機能の向上・記憶力の向上が期待できます。記憶力を高めるためには有酸素運動が有効だと言えるでしょう。
有酸素運動によって増加したBDNFは、時間とともに元の状態に戻ってしまいます。
ですので、時間が無いからと夜に有酸素運動を行っても、次の日に学習をする頃には、BDNFが元の数値に戻ってしまっているなんてことになりかねません。
ついては、時間が無い方もいらっしゃるかと思いますが、可能であれば朝に有酸素運動を行うことをおすすめします。朝行うことができれば、日中学習したことを記憶しやすくなるからです。
「どの程度の有酸素運動を行えば効果が期待できるのか」と疑問に思う方もいるかと思いますが、1日に10分程度のジョギングや散歩で十分です。息が上がるほどの運動をしてしまうと、日中眠くなってしまったりと逆に悪影響を及ぼす可能性もありますので、ご注意ください。
また、前述した通りBDNFは時間の経過とともに元の数値に戻ってしまうため、定期的(理想は毎日)に有酸素運動を取り入れてみるといいでしょう。
昼食後に10分程度の昼寝を行う
午後になると集中力が途切れてしまい、なかなか記憶するのが難しいという方は、昼食後に10分程度の昼寝をすることが効果的です。
実際に眠らなくても、目を瞑って呼吸を深くし、10分間過ごすだけでも同等の効果が得られます。これを行うことで脳の働きが活性化し、疲労感の低下・集中力の回復が見込まれます。
脳に良い食事をする
前述した通り、ビタミンB1が減ることが記憶力の低下を招きます。その為、豚肉やレバー、豆類などを意識して摂取するようにすれば、脳の機能が回復します。
もしそれが面倒だという方は、『納豆をかけた卵かけごはん』を食べるようにしてください。
一見ずぼら飯のようですが、これは記憶力の維持・向上のパワーフードです。納豆は良質なタンパク質に加えて記憶力を高める『レシチン』や血流を良くする『ナットウキナーゼ』を含みます。また、卵からは脳の記憶形成を助ける働きがある『コリン』や『レシチン』を摂ることができます。
さらにご飯(お米)は脳の唯一のエネルギー源である『糖質』になります。
また、ベリー類・ビーツ・ターメリックは、脳の機能改善に有力な成分を含んでいます。
ベリー類・ビーツについてはフリーラジカルという脳内の有害物質を排出する働き持っています。
また、ターメリックという香辛料には抗炎症作用が非常に高い『クルミン』が豊富に含まれており、クルミンを1日2回(90mg)摂取することで、記憶力の向上・注意力の向上が確認されたという研究結果があります。
香辛料を多く使用するインド料理やカレーを食べる人々は、そうでない人に比べて認知テストの成績が良いという結果があります。これにはターメリックに含まれる『クルミン』が関係していると考えられています。
空腹を長引かせない
空腹には怒りが混在するため、イライラが増長して心理的な悪影響を及ぼします。また、何も食べない状態が長く続くと血糖値が低下し、集中力や意思決定力を損なう恐れもあります。
脳はブドウ糖(糖分)で動いている為、栄養源は必ず必要になります。理想は、空腹を感じる一歩手前でナッツやプロテインバーなどでたんぱく質や良質な脂肪分を摂取することです。
カフェなど、普段とは違う場所で学習してみる
記憶には、いつもとは違う経験が伴ったほうが定着しやすくなるという性質があるため、普段いかないカフェなどで勉強することで記憶への定着がされやすくなります。
また、記憶を引き出す際に、「あのカフェで勉強したな」など、記憶のトリガーになりやすいというメリットもあります。
以下の記事内で紹介しておりますが、実はカフェには、集中力が高まる理由があるのです。
孤独を感じないようにする
前述した通り、記憶力の低下には『ストレス』が深く関係しています。社会的な孤立は強いストレスとなり、脳の健康を損なう可能性があります。さらには記憶力の低下の低下を引き起こす炎症を発生させる恐れもあるのです。
孤独を感じてしまう場合には、ボランティア活動やセミナーで交流を広げたり、SNSで人とのつながりを感じるようにしましょう。
30分単位で学習を行う
長い時間勉強していると集中力が途切れてしまう方やダラダラしてしまうという人におすすめなのが、こちらの方法になります。
具体的には、『25分勉強をして、5分休憩する』というものです。5分間の休憩で脳がリフレッシュされて疲労感が低下し、集中力を高めることができます。
また、5分休憩の後に1分程度かけて前の25分間に学習したことに目を通すことで、記憶の定着にも繋がります。
記憶力を高める学習法
ここからは、記憶力を高めることがきる学習法・記憶法を紹介していきます。
学習したことをわかりやすく説明できるか試してみる
脳に記憶した情報をわかりやすく説明(アウトプット)するには、頭の中で情報を理解し、相手にわかりやすく説明するために再構築する必要があります。
この作業を脳内で行うことで、脳は『この情報は大切なんだな』と判断し、長期的な記憶への定着に繋がります。さらに、声に出して説明することにより再度耳から情報が吸収され、聴覚での記憶定着も行われることになります。
複数の感覚機能を使って覚えてみる
人にはご存じの通り5感が存在していますよね。「聴覚」「視覚」「触覚」「味覚」「嗅覚」がありますが、これらの感覚を複数使用することが記憶力を高めることができます。
例えば、英語をなかなか記憶することができないという場合には、テキストから得る情報(視覚)の他に、CDでのリスニングを併用したり、自分で問題・回答を口に出すことにより聴覚からも情報を取得することができます。
他にも、数学であれば展開図の模型を実際に触ってみることで触覚でも記憶することができます。
このように、視覚+聴覚のように感覚機能を組み合わせて学習することで、記憶に定着させることができます。
記憶術
記憶術の中でも特に効果的なのが、「メモリーパレス(記憶の宮殿)」という手法です。この手法では、記憶したい情報を自宅など馴染みのある場所にある物に関連付けていきます。そしてその過程で、自宅などの中を歩き回る自分の姿をイメージし、なるべく詳しい情報を記憶できるよう集中します。そのプロセスは、自宅などの中を実際に歩き回り、五感で感じた情報をひとつひとつ集中して取り込んでいくことに似ています。
記憶したい情報を自宅などにある具体的な物に関連付けると、脳がその情報をまとめて整理し、必要なときに引き出せるようになります。
分散学習
分散学習とは「いったん記憶したことを、忘れかけてきたタイミングで反復して学ぶ」という学習法です。
暗記や問題集を解くなどの行動で学んだことは、一旦は頭の中に短期記憶としてとどまってくれますが、人間は記憶したことのほとんどを、およそ24時間で忘れてしまうことが研究によりわかっています。
しかし、忘れてしまう前に再復習をおこなうと、再復習を行うほど忘却率が下がっていきます。
このような『人間の記憶の忘却』というメカニズムを利用した勉強法が、分散学習です。
分散学習では1日後、7日後、16日後……というふうに、期間を空けながら繰り返し何度も復習をおこないます。次第に記憶が定着していくことで忘れにくくなり、答えをいつでも記憶から引き出せるようになるのです。
語呂合わせ
語呂合わせは、記憶の定着を図るための手法としてよく見られます。日本では、歴史の授業などでよく使われますよね。
しかし、この方法は既に一般認識されている語呂合わせでなくても、オリジナルで語呂合わせをしてもよいのです。
そうすれば、歴史だけでなく、様々な情報に使用できるようになります。
チャンク化
チャンク化とは、情報をグループに分類したり、分割したりすることです。
たとえば、「954783」という数字の列を覚えるには、1桁ずつ覚えたり、そのまま覚えたりするより、「954」と「783」に分けた方が簡単になりますよね。こうしたチャンク化が有効なのは、脳に情報の中のパターンを見つけようとする本能があるからです。情報をチャンクに分割し、わかりやすく分類することで、脳がその情報を思い出しやすくなるのです。
まとめ
いかがでしたでしょうか。普段の習慣から勉強法まで様々な方法を紹介いたしましたが、すぐに実践できる内容がほとんどでしたね。
記憶力が下がってきた、記憶力を高めたいとお考えの方は、是非実践してみてくださいね。
それでは、最後までお読みいただきありがとうございました!
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